放射線治療このページを印刷する - 放射線治療

放射線治療とは

放射線治療とは
放射線治療とは、放射線をがん病変に照射することで、がんを縮小/消失させる治療法です。手術療法、化学療法とともにがん治療の大きな柱の1つと位置づけられています。


がん細胞の遺伝子を、ターゲットとしてダメージを与え、細胞を殺すことでがんを縮小/消失させます。 がん周辺の正常組織の細胞も同様の影響をうけますが、ある程度は回復することができるため、がん細胞が死滅しても正常細胞はある程度は生き残ることができ、治療法として成り立ちます。

 一般的な放射線治療では、10回から30回程度に分割して繰り返して放射線を照射します。治療の回数は、がんの種類や拡がりの程度によって変わります。

放射線治療の特徴

化学療法が全身的治療であるのに対して、手術と放射線治療は病変やその周囲を治療する局所治療です。
 

 放射線治療の特徴は、手術や化学療法に比べると、低侵襲であることです。
放射線が照射されても、なにも感じることはありません。副作用は、手術や化学療法に比べると軽微であり、苦痛が少ない治療法です。
治療に伴い生命の危険を生じることはほとんどなく、状態が悪い方、高齢の方、合併症をかかえている方でも、安全に治療を受けることができます。
外来通院での治療が可能であり、1日あたりの治療時間は通常15分程度と短く、日々の生活を大幅に変更することなく、治療を受けることができます。
がんが発生した臓器の機能や形態を、ある程度はそのまま温存することが可能であり、治療終了後も、治療前と同様の生活を送ることができます。
 

 また、病院や医療者間で、放射線治療の技術や手法にそれほど大きな違いがないことから、どの病院でも安心して治療を受けることができます。
入院が必要ないこと、高価な薬剤を使用しないことから、お財布に優しい治療であることも特徴として挙げることができます。

放射線治療の目的

治療部位のがんの完治を目的とした根治的治療、手術と併用して治療する術前/術後治療、患者様の症状軽減/生活の質の向上を目指す緩和的治療、顕微鏡レベルの残有腫瘍の制御を目的とした予防的治療など、多岐にわたります。

放射線治療の対象疾患

対象となる疾患は、脳腫瘍、頭頸部がん、食道がん、肺がん、乳がん、肝胆膵がん、直腸がん、子宮頚がん、前立腺がん、皮膚がん、悪性リンパ腫と、全身のほぼ全てのがんとなります。

胃がんや結腸がん(直腸がんを除いた大腸がん)、腎臓がん、卵巣がん、子宮体がんなどは、根治的治療を目的として放射線治療を行うことはあまりありませんが、緩和的治療を目的とする場合は、すべてのがんが対象となります。
また、一部の良性病変も対象となります。

放射線治療の流れ

1.放射線治療医による問診、診察

がんの種類や病変の拡がり、患者様の全身状態を考慮して、放射線治療を行うことが望ましいのかどうかの判断を行います。

2.放射線治療医による病状と治療法の説明

現在の病状と治療法について、説明文書を用いて説明し、患者様/御家族より了解をいただきます。

3.治療体位や固定法の決定

放射線治療時の姿勢を決定します。治療中に体が動くと、放射線が病変に正しく当たらなくなる可能性があるため、治療中の姿勢が維持できるように、様々な固定器具を用います。

4.治療計画CTの撮影

治療体位が決まったら、治療部位の皮膚にマジック、シール等でマーカーを付け、治療計画用のCTを撮影します。

5.治療計画の立案

治療計画
撮影したCT画像をもとに、治療計画装置を用いて、放射線を当てる範囲、方向、形状、放射線の種類およびエネルギーを決定し、線量計算を行ないます。

6.治療計画の評価

病変に十分な放射線量が投与されているか、病変周囲の正常部位への放射線量が想定内であるかの評価を行い、治療計画を決定します。

7.治療計画の検証

治療計画検証
立案した治療計画に基づいて、人体を模擬したモデルに実際に放射線を当てて、放射線量や強弱の分布の測定を行います。 想定した数値や分布が得られなかった場合は、新たに治療計画を立て直します。

8.初回治療

治療寝台上で、レントゲン写真やCTを撮影し、病変の部位に正しく放射線が当たるかどうかの最終確認を行います。その後、新たに治療部位の皮膚にマジック、シール等でマーカーを付け、実際の治療を行います。治療中に痛みや熱感を伴うことはありません。実際に放射線が当たっている時間は1-2分程度ですが、初回の放射線治療には20-30分程度の時間を要します。治療部位が複数ある場合は、1時間近く要することもあります。

9.日々の照射と診察

2日目以降は、10-15分で治療は終了します。基本的に平日に毎日治療を行います。病変を完治させる治療の場合は1-2ヶ月、症状を緩和させる治療の場合は2-3週の治療期間で行われることが多いです。 週1-2回程度、診察を行って、病変の縮小の程度や症状の変化、副作用の発生の有無について評価を行います。

10.照射範囲の縮小、照射法の変更

腫瘍縮小の程度や副作用の症状を考慮して、照射範囲の縮小や照射法の変更を行う場合があります。この場合は、再度CTを撮影し、計画の立案→評価→検証→初回治療を繰り返すことになります。

11.治療終了と経過観察

放射線治療の効果は、照射終了後、数週間~数ヶ月後に出現します。また、副作用については、治療終了後、数年を経過して発生することもあります。治療終了後も、依頼科や放射線科に定期的に外来に通院していただくことになります。

特殊な放射線治療

定位照射

 小さながん病変に対して、多方向から放射線を集中させて照射する方法で、照射中心位置の固定精度を、頭部/頚部の場合は2mm以内、胸部/腹部の場合は5mm以内に保つ高精度な治療技術です。ピンポイント照射という名前でも知られています。
従来の放射線治療と比べ、1回あたりの放射線量を多くして、短期間で治療を終了させることが多いです。
 

定位照射

 当院では、胸部、腹部に対して行われており、対象疾患は、直径が5cm以内で転移のない原発性肺がんまたは原発性肝がん、3個以内で他病巣が制御されている転移性肺がんまたは転移性肝がんです。
 

 肺や肝臓に病変がある場合、呼吸に伴う病変の動きのために、病変に対して正確に放射線を照射することが困難なことがあります。
当院では、呼吸の状態を監視する装置を用いつつ、照射中に息をはいて止めてもらうことで、病変に対して正確に放射線を照射しています。

当院の放射線治療装置(リニアック)の紹介

リニアック
2013年5月より、新しい放射線治療装置が稼動しています。

 米国Varian社製のClinac iXという装置で、世界が認める高精度、高出力機であり、3次元原体照射治療(3D-CRT)、体幹部定位放射線治療、強度変調放射線治療(IMRT)といった様々な高精度放射線治療に対応可能となりました。

特徴その1 120枚のリーフを搭載

リニアック

リニアックの照射口には、MLC(多段階絞り装置)と呼ばれる遮蔽装置が装着されています。MLCを照射する範囲(病変の形状)に整形することで、不要な部位への照射を避けた治療を行うことが可能になります。
新しく導入されたリニアックでは5mm幅のリーフを搭載しており、従来の1cm幅のリーフに比べ、病変の形状への追従性が高まりました。
リニアック

特徴その2 画像誘導放射線治療(IGRT)に対応

 照射の直前や照射中に、患者様の画像情報を取得し、病変や周囲臓器の位置を確認して、照射位置の微調整を行うことを、画像誘導放射線治療(IGRT:image-guided radiation therapy)と呼んでいます。

 新しく導入されたリニアックには、OBI(on-board image)と呼ばれる診断用X線撮影装置が搭載されており、治療寝台上でX線撮影やX線透視、さらにCTの撮影を行うことが可能になりました。

 当院においては、病変の部位や求める治療精度に応じて、毎日~3日毎ごとに画像誘導下での治療を行っています。